■田んぼから始まるお酒造り

 

 

さらに今一歩、「百薬の長」たるお酒に踏み込むと、

 

「おいしいお酒は、命溢れる自然な田んぼから」

 

とも言えるでしょう。おいしく且つ健康の一助になるためには、微生物と共に醸す命溢れるお酒造りが大切。

 そしてその原料であるお米も自然なお米であることが大切です。自然なお米とは、田んぼや周りの森、川を含む大きな自然の命をも育んでいける、自然と共生できるお米造りです。具体的にいうと科学的な薬や農薬、化学肥料などを使わないお米造りです。

 

 なぜなら、これらの農薬や科学的なものに頼ると、確かに作る人間は楽になりますが、田んぼや周りの自然に住む、微生物や他の生き物たちの棲み家を奪ってしまうからです。たとえば、前述した「稲麹菌」は、農薬を散布した田んぼでは、発生しません。生きづらいので他へ行ってしまうのでしょう。

 

 また、田んぼの小さな生き物や虫たちも、このような田んぼでは生きていけません。この影響は田んぼだけでなく、水路から、川にも流れます。そして科学的な肥料や未成熟の動物性の肥料で育てたお米は痛みやすく、腐りやすくなります。

 腐りやすいお米をお酒のために発酵させようと言うのも無理が出てきます。

 そのようなお米は、酒作りの現場で、お米を蒸した際に湯気に、香りが出てきて判ります。 

 自然なお米の香りがしなければ、よいお酒は造れません。

 酒造りは、土造りから始まるものと言えます。

 

自然な水・光・空気・土が、米になり。

自然な米と水が、酒になります。

 

地酒とは、まさにその土地・風土の凝縮されたものと言えるでしょう。

 

私たちが酒を飲む時、私たちは、そこの環境の全てを身体に取り入れているのです。